第六回 エーゲ海と神話の国『ギリシャ』
Fraîcheur Anisée / Fresh Anis of Greek Islands
西洋文化発祥の地であるギリシャは、まるで絵葉書のような風景の中にオリエントの香りが漂う、ヨーロッパで最も古い歴史を持つ国です。 "海と歴史の国"と呼ばれるギリシャでは、貴重な文化遺産と美しいビーチリゾートを同時に楽しむことができます。エーゲ海の真珠と呼ばれるギリシャの島々では、紺碧の海と、溢れる太陽を浴びて輝く白壁の家々や教会が、リゾート気分を満喫させてくれます。さらに、神話と伝説の国とも呼ばれるギリシャでは、古代ギリシャ建築の傑作のひとつである「パルテノン神殿」や、まるで空中に浮んでいるかのように見える修道院「メテオラ」を始めとする、多くの世界遺産を巡ることができます。敬虔なギリシャ正教の世界と、色鮮やかな建物が並ぶ街並みも魅力的で、季節を問わず多くの旅行者がギリシャを訪れています。また、有名なギリシャ神話では、例えばミントの伝説など、いくつもの香りにまつわる伝説があります。神話では香料を初めて用いたのは神々だとされていて、美の女神アフロディテの使い女であるイオーネの軽はずみな行為が原因で、人間は香料を知ったそうです。
ウーゾというお酒をご存知ですか? 生産、消費ともにほとんどがギリシャ国内で行われているリキュールで、ほのかな甘みと柔らかい香りが特徴の、現代ギリシャ人に最も人気のあるお酒です。食欲が無いときでもウーゾをいただきながら食事をすると、俄然食事が美味しくなってくる魔法のようなお酒とも言われています。このウーゾの製造に欠かせないのが『アニス』と呼ばれるスパイス。ギリシャやエジプトなどの地中海地方で栽培されるセリ科の一年草で、古代エジプトでは利尿剤や胃腸薬に使われていたそうです。アニスは甘い香りに富む上、苦みや辛みが無いので、ケーキやクッキーなどの焼き菓子によく使われます。香りの強さから日本では好き嫌いが分かれるようですが、ヨーロッパではその香りに魔除けのチカラがあると言われているとか。また、胃のもたれや口臭を防ぐ効果もあると言われ、古代ローマでは豪華な宴会料理のあとのデザートにアニス入りのケーキを食べていたそうです。一説によると、結婚式でウエディングケーキをゲストに配るのは、このアニスケーキのもてなしにルーツがあるとか。幸せを分かち合うだけでなく、食後に消化を助ける心づかいだったようです。
オリーブオイルやオリーブ石けんなど、オリーブの聖地と呼ばれるギリシャ。そのオリーブとともにお土産に大人気なのが『練り香水』です。練り香水(ソリッドパヒューム)とは、ミツロウやワセリンなどに香りを溶かし込み、ワックス状に練り固めた香水のこと。一般的なフレグランスは香りをアルコールに溶かして作りますが、アルコールが入っていないため、つけた瞬間きつい香りと感じるようなことはありません。また、練り香水の香りの拡散力はスプレータイプの香水に比べ低くなっているので、あまり周りを気にせず使うことができます。一般的に外国人は華やかで即効性のあるフレグランスを好みますが、日本人は穏やかに静かに香る香りを好む傾向があります。これは、外国人はフレグランスを自己演出・自己アピールのファッションととらえる人が多いのに対し、日本人は自分がリラックスするためにフレグランスを使用する人が多いことの違いと言えるのですが、そういう意味でも練り香水は日本人にまさにピッタリの香水と言えるでしょう。また、世間で人気がある練り香水は容器が高級雑貨の域に達するほど美しいものが多いので、眺めているだけでも楽しめます。